月食 4 かつて一世を風靡したボサノバの女王のベスト盤。こうして聞き返してみると、ボサノバの伴奏というのは、ボーカル抜きでも通用するほどに饒舌なモダンジャズそのものだったことがわかる。現代の音楽しか知らない人には驚きかもしれない。これほどの達者な伴奏に埋没せずに歌うには、よほどの個性が必要だ。アストラッド?ジルベルトの、物憂げでそっけない、そして舌足らずの愛らしい歌いぶりが、それにぴったりだったことがわかる。Aqua de beber(おいしい水), Take to me Aruanda(アルアンダ), How insensitive(お馬鹿さん)。どれをとっても彼女の魅力でいっぱい。スピーカではなくヘッドホンで、蝶のように気まぐれなささやきを耳もとで聞き続けたい、永遠の歌姫だ。